水素関連銘柄の本命=燃料電池トラック関連株
バッテリー充電式 EV だけが電気自動車ではありません。燃料電池も立派な電気自動車であり、代替エネルギーから水素が作り出せれば(いわゆるグリーン水素)、いよいよ詭弁ではない本当のエコに近づきます。
しかし、まだまだ市場の評価の足りない中小型の株もありますので、とても楽しみな産業です。
目次
- そもそも水素関連銘柄(燃料電池)に強気の理由【充電式EVの不安要素ゆえ】
- 水素燃料電池はトラックから普及する、これだけの理由
- 水素燃料電池トラックのプレーヤーを整理(魅力的な専業メーカーあり)
- プレーヤー分析から見る燃料電池トラック専業メーカー ① 「売上成長ポテンシャル」
- プレーヤー分析から見る燃料電池トラック専業メーカー ② 第二の伸びしろ「買収」
- 【おまけ】周辺業界にも想像を広げる(乗用車、建設機械、ガソリンスタンド)
1)そもそも水素関連銘柄(燃料電池)に強気の理由【充電式EVの不安要素ゆえ】
電気自動車化が世界の既定路線になった今、Tesla はじめバッテリー充電式の電気自動車が増えるのは間違いがありません。しかし、バッテリーEV では以下の不安要素があります。
- リチウムをはじめとした資源の不足
- ピーク電力の不安
- ガソリンスタンド業界(石油業界)の巻き返し
それゆえ、バッテリーEV だけが普及する世の中は想定し難いと思われます。燃料電池には推し進められるべき必然性があると思います。
2)水素燃料電池はトラックから普及する、これだけの理由
今回のテーマは燃料電池車の中でもトラックです。なぜ「本命はトラック株」なのでしょうか。
たしかにトヨタのミライはじめ、現代自動車や BMW に燃料電池の乗用車はあります。しかし、普及の初動の役割はトラックに期待した方がよさそうだと考えます。理由は以下の通りです。
- 燃料電池は低重量かつ省スペースであるため、トラックでこそ効果が出やすい。
- 充填が速い。稼働率の重視される商用車に不可欠の要素。
- 水素ステーションがまだまだ少ない中、港など限られた場所で充填するトラックに親和性が高い
- 安全性に不安があるとされてきたため、市街地を走らないトラックで実績を積むべき(筆者の勝手な想像)
(ご参考動画: Ballard Power Systems (BLDP: Nasdaq) による、ディーゼル車・燃料電池・バッテリーEV のわかりやすい性能比較ビデオ)
3)水素燃料電池トラックのプレーヤーを整理(魅力的な専業メーカーあり)
それでは、燃料電池トラックメーカーにはどのようなところがあるのでしょう? 以下のように3つに分けて整理します。
大手トラックメーカーで燃料電池に積極的な会社:
- Daimler Truck Holdings (DTG: Xetra) 時価総額270億ユーロ
- Volvo (VOLVB: Stockholm) 時価総額4000億クローネだから400億ユーロぐらい
- XCIENT / Hyundai Motors (005380: Korea) 時価総額51兆ウォンだから5兆円ぐらい
燃料電池トラック専業メーカー:
- Nikola (NKLA: Nasdaq) 時価総額39億ドル(個別銘柄記事はこちら)
- Hyzon Motors (HYZN: Nasdaq) 時価総額16億ドル(個別銘柄記事はこちら)
- Ballard Power Systems (BLDP: Nasdaq) 時価総額36億ドル。完成車でなくパワーモジュールを製造販売
上記6社ほど燃料電池に賭けていない、その他多くのトラックメーカー:
- Volkswagen グループ (Scania, MAN)など欧州のトラック・トップブランド数社
- 中国の大手トラックメーカー(おどろきの事実: 世界のトラック生産台数の半分は中国である)
- 日米メーカー(ただし、トヨタ系の日野自動車や、子ブランドKennworth でトヨタと提携する PACCAR など燃料電池に積極的な会社も)
燃料電池の成長の果実をとれるのは、あきらかに専業メーカー(いわゆるピュアプレイ – Nikola, Hyzon, Ballard Power)でしょう。他の多くのメーカーは、ディーゼルトラックの市場を燃料電池を含めた電気トラックに侵食されるか、よくても燃料電池でディーゼルトラックの減少をカバーする形にとどまるからです。
(ご参考個別銘柄記事「電気トラック株ニコラ Nikola・スキャンダル後の4つの着眼点まとめ」「水素燃料電池トラック株の本命・ハイゾンモーターズ Hyzon Motors」)
さて次は、市場のプレーヤー分析で、専業メーカーが伸びるシナリオを考えます。
4)プレーヤー分析から見る燃料電池トラック専業メーカー ① 「売上成長ポテンシャル」
燃料電池化に Daimler Truck, Volvo, Hyundai といった大手が積極的な一方、他の世界の大手は全くEV化に着手していないわけはないとは言え、出遅れは鮮明です。
そして「中国が世界の生産台数の半分を占める」という事実。
(ご参考: 中国の10大トラックメーカー)

この市場の状態を専業メーカーの立場から見れば、「既存のディーゼルトラックの市場を侵食していく」という売上成長の伸び代が山のように開けているように見えるのです。
事実、Hyzon は既に中国へも納入を開始しています(以下の写真)。

5)プレーヤー分析から見る燃料電池トラック専業メーカー ② 第二の伸びしろ「買収」
しかし、もう一歩想像を進めて、大手メーカーの視点から考えると、専業メーカーは時価総額が小さいうちに買収したいという誘因が出てくるのではないかと想像します。燃料電池投資に出遅れている大手メーカーが時間を買う代わりに専業メーカーを買収したり、それを防ごうとして逆に燃料電池で進んでいる大手メーカーが買収することもあるかもしれません。
どちらにしても、第二の伸びしろとして「大手から買収の食指が伸びること」も期待できそうに思います。知的財産という形で技術の蓄積を高め、実際の販売実績を積んでいけば、魅力的な買収対象になるのではないでしょうか?
また、自分が専業メーカーの経営者だったらその視点は忘れません。思えば、Hyzon と Nikola のホームページがキレイなこと、Hyzon は Twitter もカッコよくて IR の情報提供もよいことを考えると、あの地味で実直そうな CEO にも意外に同じ発想が頭の片隅にはあるのかなとつい想像してしまいます。
(ご参考個別銘柄記事「電気トラック株ニコラ Nikola・スキャンダル後の4つの着眼点まとめ」「水素燃料電池トラック投資の本命・ハイゾンモーターズ Hyzon Motors」)
6)【おまけ】周辺業界にも想像を広げる(乗用車、建設機械、ガソリンスタンド)
冒頭に示したように、燃料電池自動車はこれから押し進められる必然性がありそうです。そこで、更にもう一歩想像を広げて未来予想をしてみたいと思います。
- 燃料電池の普及はトラックだけに止まらないはずです。乗用車も増えてくるでしょう。トヨタ、Daimler (Mercedes-Benz)、Volvo、現代などはすでに燃料電池技術の蓄積があるわけですが、他の数多くの乗用車メーカー(特に米系や中国系)の中からも、燃料電池専業メーカーを買収したい状況になるかもしれません。
- 建設機械はどうでしょうか。安全性に信頼が高まれば、トラックと同じく軽さや充填の速さという理由で燃料電池が使われるようになるべきではないでしょうか?
- 石油業界・ガソリンスタンドはガスパイプラインに水素を流す計画です。次は政府を動かして、水素ステーションを急増させたいところでしょう。政府筋が水素燃料電池について言及し始めたら、強力な株価カタリスト(きっかけ)になることでしょう。
(定点観測用: ヨーロッパの水素ステーション分布と数)
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